
Appleで長年にわたり最高デザイン責任者(CDO)を務め、iPhoneやiMacなど数々の革新的な製品を生み出したジョナサン・アイブ氏が、サンフランシスコのモスコーニ・センターで開催されたイベントに登壇しました。今回の対談は、インターネット金融サービスを展開するStripeが主催し、共同創業者のパトリック・コリソン氏との会話形式で進行されました。
アイブ氏は、クリエイティブなチームの作り方やデザイン哲学、さらには失敗から学んだこと、そして現在進行中のプロジェクトについて語り、多くの参加者に強い印象を与えました。
小さなチームと信頼が生む大きな成果
Apple在籍時、アイブ氏が率いたデザインチームは驚くほど小規模なものでした。しかし、そのチームは強い信頼関係で結ばれ、毎週金曜日にはメンバーの一人が手作りの朝食を振る舞うという伝統があったといいます。この習慣は、互いの信頼を深めるだけでなく、「ユーザーへの配慮」へとつながる文化を育てました。
また、プロジェクトの進行中には、オフィスではなくメンバーの自宅で作業を行うことも多く、より親密なコミュニケーションが可能だったと振り返ります。この環境が、Apple製品の「人を思いやるデザイン」を形作った要因だとしています。

「美しさ」とは何か – デザイン哲学の核心
ジョナサン・アイブ氏は、デザイナーとしての使命を「単なる道具ではなく、人の生活を豊かにする製品を作ること」と語っています。
Apple製品のケーブルの巻き方一つに至るまで、ユーザーの体験を想定して設計されたことは有名なエピソードです。
彼にとって、美しいデザインとは見た目の美しさだけでなく、使いやすさを兼ね備えたものを意味します。どれほど見た目が洗練されていても、使いにくければそれは「美しくない」と考えているのです。
「誰も見ない場所にまで手を抜かない」
この哲学が、Apple製品の細部へのこだわりとして表れていると強調しました。
デザインにおける覚悟と責任
対談の中で、アイブ氏は製品を世に送り出すデザイナーとしての責任感についても触れました。
「イノベーションには予期しない結果が伴うことがある。しかし、製品がユーザーに不利益をもたらした場合、その責任はデザイナーが負うべきだ」との考えを示しました。
また、過去に手掛けた製品の中で成功だけでなく、望ましくない結果を生んだものもあると率直に認め、失敗から学んだ教訓についても語っています。

テクノロジー業界への懸念と未来への展望
近年のテクノロジーの急速な発展について、アイブ氏は「社会的な仕組みが追いついていない」と懸念を示しました。
特に、ソーシャルメディアについては「広がるスピードに対して、十分な検証や倫理的な配慮が行われていない」と批判しています。
一方で、**人工知能(AI)**の分野に関しては、早期から安全性や倫理観について議論が行われている点を評価し、希望を持っていると語りました。
今後のプロジェクトと期待
アイブ氏は「具体的な内容は話せないが、自分自身が責任を感じているプロジェクトに現在取り組んでいる」と明かし、未来への展望を示唆しました。Appleを去った後も、LoveFromの設立を経てデザイン業界に革新をもたらそうとする姿勢は変わっていないようです。
ジョナサン・アイブ氏とAppleの未来
今回の対談で、アイブ氏のデザインに対する情熱や哲学が改めて浮き彫りになりました。Appleを離れた現在も、彼の影響力は衰えることなく、世界中のデザイナーやクリエイターにインスピレーションを与え続けています。
Stripeのイベントでの貴重な対談は、彼のデザイン哲学を直接聞ける数少ない機会となり、多くの参加者がその考え方に感銘を受けました。
映像はこちらから視聴できます。再生時間は約59分04秒。
次なる革新がどのような形で世に現れるのか、世界中が注目しています。
Source: Stripe/YouTube via MacRumors
